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パーソナルで大切にしていること
2026/07/16

「分かる・できる・自然に現れる」まで、身体の学びを育てる
「先生と同じ形にならない」
「正しく動こうとすると、余計に力が入ってしまう」
「どこを使っているのか、よく分からない」
パーソナルトレーニングでは、このような声をよく聞きます。
見本と同じ形をつくろうとすることは、決して悪いことではありません。フォームは、安全に運動したり、目的に合った動きを探したりするための大切な目安です。
ただし、見た目が同じでも、身体の中で起きていることまで同じとは限りません。
呼吸を止めて頑張っている人もいれば、首や肩に力が入っている人もいます。反対に、床からの支えを感じながら、無理なく動けている人もいます。
だから私は、形だけでなく、
「今、何を感じて動いていますか?」
ということも大切にしています。
見本をまねるだけでは分からないこと
今回の漫画では、ヒップリフトを例にしています。
私は最初に見本を見せながら、
「踵で床を押しながら、骨盤を持ち上げてみましょう」
と伝えました。
すると、お客様は見本と同じ形をつくろうとして、一生懸命にお尻を高く持ち上げました。
しかし、詳しく話を聞いてみると、
「お尻をもっと上げて、腰を反らそうとしていました」
とのことでした。
私が伝えた「骨盤を持ち上げる」という言葉を、お客様は「できるだけ高くすること」と受け取っていたのです。
これは、説明を聞いていなかったわけでも、運動ができなかったわけでもありません。
人は、指導者の言葉をそのままコピーするのではなく、これまでの経験や、そのときに感じていることをもとに、自分なりの方法で動こうとします。
同じ言葉を聞いても、実際に選ばれる動き方は人によって違うのです。
「今、何を感じているか」を確かめる
そこで私は、すぐに形を直すのではなく、質問しました。
「形は大切な目安です。今、何を感じて動いていますか?」
すると、お客様は、
「踵で床を押しています」
と答えました。
ここで大切なのは、「踵を意識することが唯一の正解」ということではありません。
踵と床の接触が、その方にとって現在の動きを理解する手がかりになった、ということです。
もう一度、踵で床を押す感覚を確かめながら動いてもらうと、お客様は、
「力みが抜けて、背中が楽に。背骨が伸びたような気がします」
と、ご自身の言葉で違いを教えてくれました。
「背骨が伸びた感じ」は、背骨が物理的に長くなったことを証明するものではありません。また、感じた場所と、実際に働いた筋肉が必ず一致するとも限りません。
それでも、本人が感じた違いは、次の動きを考えるための大切な情報になります。
身体は、感じながら動きを調整している
私たちの身体は、筋肉への命令だけで動いているわけではありません。
足裏が床に触れている感覚。
身体を支えている場所。
呼吸のしやすさ。
身体の重さや移動。
視線や周囲の空間。
さまざまな情報を受け取りながら、その場に合う動き方を選んでいます。
例えば、暗い場所では歩幅が小さくなります。柔らかいソファと硬い椅子では、立ち上がり方が変わります。重い荷物を持てば、身体の支え方も変わります。
身体は、環境や課題に応じて動きを調整しているのです。
運動でも同じです。
- まず動いてみる
- 何を感じたか確かめる
- 実際に何をしていたか振り返る
- 条件や方法を少し調整する
- もう一度動いてみる
この循環を繰り返すことで、本人にとって実行しやすい動き方を探索していきます。
パーソナルだから、一緒に確かめられる
全員を一つの形に揃えることが、パーソナルトレーニングの目的ではありません。
身体の大きさ、関節の動きやすさ、これまでの運動経験、その日の疲労、痛みへの不安、床の硬さなどによって、動き方や感じ方は変わります。
そのため、同じエクササイズでも、
- 足の位置を少し変える
- 動く範囲を小さくする
- 速さを変える
- ボールやバンドを使う
- 視線や呼吸を変える
- 支える場所を増やす
といった調整を行います。
道具も、負荷を加えるためだけに使うわけではありません。身体と道具が触れることで、支える場所や力の方向が分かりやすくなることがあります。
トレーナーの役割は、身体を一方的に正しい形へ動かすことではありません。
質問や見本、道具、環境を使いながら、お客様が自分の身体を理解するための手がかりをつくることです。
「分かる」から「できる」へ
私がパーソナルで大切にしているのは、次の過程です。
分かる
自分が何を感じ、実際にどのように動いているのかが分かる。
できる
今までの方法だけでなく、条件を調整しながら別の動き方も試せる。
自然に現れる
最終的には、特定の部位をずっと意識しなくても、その場に合った動きが自然に現れる。
最初は、踵や背中などに注意を向けることが必要かもしれません。しかし、いつまでも身体の一部分を意識し続けることがゴールではありません。
動いて、感じて、確かめる経験を重ねることで、考えすぎなくても使える動き方が少しずつ育っていきます。
身体を直すのではなく、身体との関係を育てる
今の動き方は、単純に「間違っている」のではありません。
これまでの経験や環境、そのときの課題に対応するために、身体が選んできた方法です。
だからこそ、できない動きを無理に繰り返すのではなく、感覚や環境、課題の難しさを調整します。条件が変われば、身体は別の方法を探索できます。
パーソナルトレーニングは、指導者の正解を一方的に覚える時間ではありません。
自分の動きを分かり、別の方法を試せる。
そして、状況に合った動きが自然に現れるようになる。
私は、そのような身体の学びが育つ過程を大切にしています。
最初からうまくできなくても大丈夫です。分からない感覚があっても、他の人と感じ方が違っても構いません。
正しくできているかを気にしすぎるより、まずは今の身体が何を感じ、どのように動いているのか。
一緒に確かめてみませんか?
